Shin-Ichi Fukuoka

生命とは何か?
DNAの二重らせん構造の発見に始まった20世紀の生命科学は、この問いに、自己複製するシステム、と答えた。
でも私は、この定義、そして利己的遺伝子の考え方はもはや古いと思う。
彼らは生命を一側面からしかみていない。
生命が生命たる特性は、生命の内側の、もっと深いところにある。

生命は利己的に見えて、その実、利己的ではない。
生物は互いに他を支えつつ、律している。
つまり利他的で、相補的だ。
絶え間ない物質、エネルギー、情報の交換。それは自らを壊しつつ、創り変えることでなされている。
自らを壊すことは、エントロピー増大の法則に対抗するために、生命が進化の出発点で選び取ったたったひとつの方法だった。
生命の生命たる所以はここにある。

生命とは何か?
そう問われたら、私は、動的平衡である、と答えたい。
相補性を維持しつつ、分解と合成を繰り返し、あやういバランスを保つこと。
かくして動的平衡は、私の生命論のキーワードとなった。
この映像は、動的平衡のコンセプトを可視化したものである。

「動的平衡」宣言
福岡 伸一